イーサリアムの共同創設者チャールズ・ホスキンソン氏が開発したブロックチェーンが稼働。先行販売の購入者の約95%を日本人が占めた、日本と縁の深いコイン。
2017年から2018年ごろに暗号資産を始めた日本人なら、カルダノの名前を知らない人はいないでしょう。カルダノは、日本人の売買によって価格が押し上げられた、日本と特に縁の深いコインです。
カルダノを開発したのは、チャールズ・ホスキンソン氏です。もともとイーサリアムを立ち上げたメンバーの一人でしたが、運営の方針をめぐって意見が分かれてイーサリアムを離れ、自ら新しいブロックチェーンを作りました。それがカルダノです。
ホスキンソン氏は大の日本好きとしても知られ、何度も日本を訪れています。
ちなみに、カルダノで使われる暗号資産「ADA(エイダ)」の名前は、世界で最初のプログラマーと言われる19世紀のイギリスの女性数学者、エイダ・ラブレスにちなんでいます。
カルダノも、イーサリアムと同じようにスマートコントラクト(条件がそろうと自動で実行されるプログラム)を動かせます。違うのは、作り方です。
イーサリアムは「まず世に出して、問題があれば後から直す」スピード重視。カルダノは「専門家が厳しく審査してから世に出す」慎重派です。そのぶん、カルダノの開発はとてもゆっくり進みました。
また、取引を承認する仕組みも違います。ビットコインやかつてのイーサリアムは、膨大な電力を使って計算を競い合う仕組みでしたが、カルダノは最初から、電力をほとんど使わない仕組みを採っています。
カルダノは完成前に、開発資金を集めるためADAを先行販売しました。その購入者の約95%が日本人でした。
ところが、日本の暗号資産取引所でADAが取り扱われるようになったのは、2021年になってからです。それまで、日本人の多くは海外の取引所でADAを買っていました。私自身も、当時は海外の取引所でADAを購入していた一人です。
カルダノの名前が一気に広まったのが、2017年の終わりから2018年の初めにかけての暗号資産ブームです(ICOブーム)。ビットコインやイーサリアム、XRPが軒並み急騰する中で、ADAもわずか数か月で数十倍に跳ね上がり、時価総額で世界の上位に並びました。
ただ、ブームは長く続かず、その後ADAの価格は大きく下がっています。
カルダノが他のコインと違うのは、国の政府機関との取り組みに力を入れてきたことです。中でも力を注いだのが、アフリカでした。
日本なら、卒業証明書や成績証明書は、学校が記録をきちんと管理しているからこそ信用されますよね。ところがアフリカの多くの国では、記録は紙のまま、紛失や偽造も珍しくありません。
そこでカルダノの開発会社は2021年、エチオピア政府と、約500万人の生徒と約75万人の教師の記録をブロックチェーンで管理する計画を発表しました。改ざんできない記録で、誰でも自分の経歴を証明できるようにする、と言う構想です。
大きな注目を集めたこの計画ですが、実際には一部での試験運用にとどまり、計画どおりには広がりませんでした。開発会社自身も、構想は実現しなかったと振り返っています。
これは私個人の意見ですが、この結果は、ある意味で当然だったのかもしれません。
もともと国の仕組みがうまく回っていない国の問題は、技術で解決できる話ではないからです。国民のためのサービスを作り、動かしているのは、結局のところ人であり、組織です。その中にいる人たち、そしてそれを管理する人たちに問題がある限り、ブロックチェーンを使おうが、AIを使おうが、何も変わりません。
どれだけ優れた技術も、それを使う人と組織が変わらなければ、力を発揮できない。これは、私たちが覚えておかなければならない、とても基本的なことだと思います。
カルダノの価格は、ここ1年で大きく下がりました。
きっかけの一つが、2025年11月に起きた障害です。不正な形式の取引が送り込まれたことで、カルダノのネットワークが一時的に二つに分かれてしまいました。利用者の資産に被害はなく、ネットワークも数時間のうちに元に戻りましたが、信頼が揺らいだことで価格は下がりました。
さらに2026年に入ると、暗号資産の市場全体が下落したことに加え、カルダノの上で使われるサービスが伸び悩んでいることも重なりました。慎重に作り込んできた分、実際に使う人やお金が集まるスピードで、他のブロックチェーンに後れを取っているのです。その結果、ADAの価格は数年ぶりの安値圏まで落ち込んでいます。
カルダノは、イーサリアムの共同創設者が、スピードよりも慎重さを重んじて作ったブロックチェーンです。日本人に支えられて生まれ、アフリカで社会の仕組みを変えることにも挑みました。
理想は大きく、そのすべてが実を結んだわけではありません。それでも、日本人にとって忘れられないコインの一つであることに、変わりはないでしょう。