DeFi(ディーファイ)とは、「Decentralized Finance(分散型金融)」の略で、銀行や証券会社を通さずに、お金の貸し借りや交換ができる仕組みのことです。
とは言え、これだけでは何のことか分かりませんよね。ここでは、ある場面を例に、私たちがよく知っている銀行と比べながらご説明します。
例えば、あなたがビットコインを持っているとしましょう。しばらく手放すつもりはありません。ところが、急に1週間だけ、まとまったお金が必要になりました。
銀行でお金を借りようとすると、どうなるでしょう。申込書を書き、収入や勤務先を証明する書類を出し、審査を待ちます。数日、場合によっては何週間もかかりますし、そもそも銀行は、ビットコインを担保としては受け付けてくれません。結局、ビットコインを売るしかなくなってしまいます。
これに一番近い身近な仕組みは、「質屋」かもしれません。品物を預ければ、審査なしでその場でお金を貸してくれる。期限までに返せば品物は戻り、返せなければ質屋が品物を売って回収する。
DeFiでお金を借りる仕組みは、この質屋とよく似ています。違うのは、店も店員もいないことです。
そして、担保の値段が大きく下がって、貸したお金を回収できなくなりそうになると、プログラムが自動で担保を売って、貸し手のお金を守ります。
イーサリアムの記事でご紹介した、「もし(if)〜したら、(then)〜する」と言うスマートコントラクトが、ここでは質屋の店員の代わりをしているわけです(こちらを参照)。
では、そのお金はどこから来るのでしょうか。
銀行の場合、私たちが預けたお金を、銀行が別の人に貸し出しています。貸し出しの利息は高く、預金の利息はほんのわずか。その差額が、銀行の利益になります。
DeFiでは、お金を預けたい人と、借りたい人を、プログラムが直接つなぎます。間に銀行がいないので、借り手が払う利息の大部分が、そのまま預けた人に届きます。利率も、借りたい人が多ければ上がり、少なければ下がると言うように、自動で決まります。
DeFiでは、暗号資産同士の交換も、取引所の会社を通さずに行えます。
私たちが両替をする時は、銀行や両替所が間に入り、手数料を取って交換してくれますよね。DeFiでは、あらかじめ多くの人が出し合った暗号資産の「お財布」から、プログラムが自動で交換してくれます。お財布にお金を出した人たちは、その見返りとして、交換の手数料を受け取ります。
DeFiには数多くのサービスがありますが、代表的なものは次のとおりです。
| サービス | 何ができるか |
|---|---|
| Uniswap(ユニスワップ) | 暗号資産の交換。DeFiで最も有名なサービスです |
| Aave(アーベ) | お金の貸し借り。貸し借りのサービスでは最大級です |
| Compound(コンパウンド) | お金の貸し借り。後でご紹介する、2020年のDeFiブームのきっかけを作りました |
| MakerDAO(メーカーダオ) | ドルと同じ価値を保つ暗号資産「DAI(ダイ)」を発行。現在は「Sky」に名前を変えています |
| Curve(カーブ) | ドルと連動する暗号資産同士の交換に特化 |
中でも、交換のUniswapと、貸し借りのAaveが、DeFiの二大看板と言えるでしょう。
DeFiが一気に注目を集めたのが、2020年の夏です。
Compoundが、サービスを利用した人に独自のコインを配り始めたことをきっかけに、お金を預けたり借りたりするだけでコインがもらえると言うので、世界中からお金が流れ込みました。DeFiに集まったお金は、わずか数か月で何倍にも膨れ上がりました。
ただ、店員のいない仕組みには、弱点もありました。
DeFiのプログラムは、担保の値段がいくらかを、自分で調べることができません。ブロックチェーンの外にある取引所の価格を、誰かに教えてもらう必要があるんです。
2020年11月、その弱点が表に出ました。Compoundは、価格を主にある一つの取引所から受け取っていたのですが、そこで、本来ほぼ1ドルで動くはずのDAIの価格が、ほんの一時、1.3ドルまで跳ね上がったのです。プログラムは、その価格をそのまま信じました。その結果、「借りたお金の価値が急に膨らんだ」と判断され、多くの利用者の担保が自動で売られてしまいます。その額は、日本円にして100億円を超えました。
価格の情報源が一つだけだと、そこがおかしくなった瞬間に、プログラムも一緒に間違えてしまう。この問題を解決するのが、「Chainlink(チェインリンク)」と言う仕組みです。Chainlinkは、たくさんの独立した参加者がそれぞれ価格を集め、突き合わせたうえで、信頼できる価格だけをプログラムに届けます。今では、多くのDeFiのサービスがこうした仕組みを使っています。
面白いのは、DeFiを「怪しいもの」と見ていた既存の金融機関が、その仕組みを自ら取り入れ始めたことです。
2022年、アメリカの大手銀行JPモルガンは、シンガポールの金融当局が進める実験の中で、DeFiの仕組みを使った取引を行いました。日本円とシンガポールドルをデジタル化して、Aaveのプログラムを銀行向けに作り替えたもので交換したのです。この実験には、日本のSBIグループも参加しています。
2024年には、世界最大の資産運用会社ブラックロックが、イーサリアムの上で動く投資信託を立ち上げました。
なぜ、既存の金融がDeFiを取り入れるのか。理由はシンプルです。DeFiの仕組みを使えば、24時間いつでも、何社もの仲介を挟まずに、すぐに取引を終わらせることができます。つまり、速くて、安い。既存の金融機関にとっても、それは見過ごせない魅力だったと言う事です。
ただし、銀行が取り入れているのは、誰でも使えるDeFiそのものではありません。参加者を確認した人だけに限った、銀行向けに作り替えた仕組みです。「便利な仕組みだけを取り入れ、管理は自分たちの手に残す」。それが、今の既存の金融のやり方だと言えるでしょう。
DeFiは、銀行がしてきたお金の貸し借りや交換を、プログラムが代わりに行う仕組みです。審査も店員もいらず、24時間、世界中の誰とでもやり取りできます。
一方で、プログラムが外の世界の情報を正しく受け取れなければ、思わぬ事故も起きます。それを乗り越えながら、今やDeFiの仕組みは、既存の金融の中にも取り入れられ始めています。